【僕らの撃退大作戦】


タカヤの言葉に、電話口の女性は『え?』と怪訝そうな声をあげた。


「今日の朝礼で、うっかりしてナンバーを聞き逃してしまったんですよ。
教えてもらえますか?」


そう言ったタカヤの言葉に、彼女は受話器を口元から離したのか、声が少し遠退く。


そうしてから彼女が正行員ではなく、パートだったことを思い出し、タカヤは頭を抱えたくなった。


パートの彼女は朝礼に参加してないから、番号を知る筈がない。


しかも……


『次長に訊いたんですが、電話ではお教え出来ないみたいで……』


すまなそうに言う彼女に、溜め息をつきそうになった。


──そりゃそうだよな。


電話口で番号を言ったら、誰に聞かれているかわかったものではないし、行員に成り済まされているかもしれないので、当然のことだ。


パートの自分にわからないことを次長に聞いて指示をあおぐのも、当然だ。


その当たり前のことに頭が働かなかった自分に、タカヤは心の中で舌打ちをした。


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