【僕らの撃退大作戦】
???
あてどなく歩き続けていたためか、手のひらがじっとりと汗ばんでいた。
晩夏というのは、どうしてこうも気だるいのか。
傾きつつある陽に伸びていく影を見つめながら、男は嘆息した。
仕事を失ったのが数ヶ月前。
住み家を追われ、貯金もほとんど食いつくしてしまった。
正雇用でない仕事をしていたが、その立場に満足していたわけでも、甘んじていたわけでもなかった。
真面目にさえ働けば正雇用の道が続いていると思ったから、がむしゃらに頑張っていたのだ。
なのに、ていのいいリストラに合って職を失い、それからすぐにローンに行き詰まり、住宅を手放した。
妻は子どもを連れて出て行き、あとに残された紙きれは、男が判を押すだけの状態。
人生の八方塞がりだ、と男は再び嘆息した。
伸びた影の先には、男が住宅ローンを借りた銀行が構えられていて、差し込む光にガラス張りの部分がキラキラと反射していた。