濡れた体温ごと奪って
「卒業おめでとう」
「…ありがとう」
「それと…これ…」
翔ちゃんはそっと私から離れると、ズボンのポケットから小さな箱を取り出して開いて見せた。
…翔ちゃん…これって…。
「紗耶。俺がイギリスから戻ったら…結婚してくれないか」
「…え……翔ちゃん…」
「ずっとこの日を待ってた。俺は、お前とは…恋人同士としてじゃなく…婚約者として歩んで行きたい」
あまりにも唐突過ぎて、私の手が震えて…上手く思考回路が回らない…。