素直に優しく―360日の奇跡―
内心びくびくしながらシンの様子を伺う私はやっぱり過去からは抜け出せないみたいだ。
「過保護っつーか…誰でも心配するだろ。」
「しないし…」
「俺はする!とにかく、気をつけろよ。」
少し乱暴に撫でられた頭に両手をやりながらやっぱりだらしなく口元が緩んでしまった。
――…頭、撫でられた。
記憶にない行為に嬉しくなって、でもやっぱり恥ずかしくて小さく頷いて自転車に跨がった。
「また明日な。」
「うん。……また明日…。」
こう言うのを友達って言うんだろうか。
また明日、って手を振って別れて…明日また会う。
そんな関係の人間なんていないからくすぐったかった。
「気をつけろよー!」
「わかった!」
自転車を走らせて後ろから聞こえた声に素直に答えた。
過去に縛られたままの自分が嫌いだった。
ありのままの自分を受け入れてくれない周りの人間が嫌いだった。
でも、自分から一歩を踏み出そうって思えた今日の自分は少しだけ好きになれそうだった。