素直に優しく―360日の奇跡―



チェリーがご飯を食べているのをしばらく見た後、自分のご飯を作る。

お米を研いで、炊飯器にセットした後お風呂を沸かす。

これも日課だ。




私の家は両親がいない。

いないと言う言い方はおかしいかもしれないけど。


小学二年の時、父親は単身赴任で家を出た。でも寂しいなんて思わなかったんだ。
むしろホッとした。

私も姉ちゃんもママも父親が怖かった。

何か気に入らない事があればすぐに殴る蹴るの暴力に出る。

口答えをした時なんか病院に行かなきゃいけないくらい殴られた。

だから、父親が居なくなって本当にホッとしたんだ。



この家に思い出なんかない。

あるのは恐怖だけ。

また保育園に通っていた頃、些細な事で父親が怒ってママに暴力を振るった。

リビングにある大きな合わせガラスに投げつけられたママが割れたガラスの破片で血を流していたのは今でも忘れられない。



だから、この家は嫌い。


私を、姉ちゃんを、ママを…過去から解放してくれないから。




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