素直に優しく―360日の奇跡―
シン達と出会うまではこうして笑う事もなかった。
笑うどころか、自我をだす事も、話す事すら稀。
自分でもわかるくらいに変われた自分が昔よりもずっとずっと好きになれている。
「ヨリの姉ちゃんってほんとに帰ってこねーんだな。」
「まぁね。」
「寂しくねぇの?」
お皿を洗い終わって手に付いた水をタオルで拭きながらシンが聞いてきた事に私はすぐには答えられなかった。
「夜一人だろ?」
「メグ達がいない時は。でもチェリーいるし。」
「そっかそっか。」
タオルで拭いたばかりの手でチェリーの頭を撫でて笑うシンの横顔に心臓がドクリと一瞬高鳴った。
感じた事すらない気持ちに思わず首を傾げてしまった私をみて同じように首を傾げるシン。
「どしたー?」
「……別に…何も。」
何も、何もない。
今は普通だしさっきのはただの思い過ごし。
そう自分を納得させてチェリーの頭を撫でた。