素直に優しく―360日の奇跡―
好き、と一口に言ってもいろんな好きがあるだろうし…
シンの言う好きな人の定義が全くわからなかった。
「……わからない。好きってまずなんなの?」
「そっからかよ……あー、好きって言うのは…」
「言うのは…?」
「言うのは………何だろうな。」
自分から振った話題で何言ってんだ、と思った。
でもほんとにわからないみたいで真剣に悩むシンがちょっと可愛かった。
普段大人びたシンなだけあって悩む仕種なんかが子供っぽく見える。
「あ、好きは好きだ!」
「意味わからん。」
「だよなー…」
未だにスポンジとお皿を持ったままのシンを見たまま次の言葉を待ってみる。
「よくよく考えれば俺今まで好きな奴いなかったしなー。」
「今まで?って事は今はいるって事?」
「まぁなー。」
何でもないような言い方でもなぜか胸がギュッと締め付けられるように痛くなった。
この痛みは何…?
何で…シンに好きな人いるだけでイライラするの…?
自分で自分がわからない。