素直に優しく―360日の奇跡―
目の前にシン。
隣に知らない女。
……心臓が痛い。
「あゆ。ヨリと同中のはずだけどなー。」
「同中だよ。しかも同じクラス!ね?飯沼さん。」
「……あんたなんか知らないし…用ないなら話し掛けないで。」
視線の端でシンとあゆとか言う女の繋がった手をみてまた体が冷たくなった。
――…この女がシンの好きな女なんだ。
気付きたくないような事も気付いてしまった。
イライラはしない。
でも、胸が痛い…。
これが恋なんだね。
「……付き合ってんの?」
「そうそう。昨日からな。」
「ふーん…………じゃあね。」
「は?ヨリ?」
ここから早くいなくなりたい。
見たくなんてない。
寂しい、虚しい、悲しい。
気持ちを殺すなんて容易い事なんだよ。
私には、友達なんていらない。
人間なんて所詮は一人なんだから。
シンとシンの彼女に背を向けて歩いた。
走りたいけど、それはできなかった。
自分にある小さいバカみたいなプライドが邪魔をするんだ。