素直に優しく―360日の奇跡―





「好きなら好き。

思った事言わなきゃ伝わらないよ。」


「…別にいらない。今まで一人だったんだから。」




半分ほんとで半分うそ。

一人だったのはほんとだけど、ずっと一人だったのはうそ。


三ヶ月だけでも確かに私は一人じゃなかったから。




「パパの事あるからわかるけどさ…」


「うん…」




過去の事、でもトラウマになっている過去達は素直に何かを伝えると言う気持ちを奪っていく。

それは私だけじゃなくて、姉ちゃんからもママからも。



食器棚からお皿を取り出して思い出したくもないような思い出を頭から追い出した。




「卵はヨリの担当だからね。」


「わかってるし。」


「あ、チーズ入れてよ?」




空っぽだった心は姉ちゃんと一緒にいるだけで少しずつだけど埋まっていく。

卵を焼くのに冷蔵庫から出して割って崩す。




「あ、姉ちゃんいたんだ!」


「他人様の家に勝手に上がるなって。」


「街でヨリに会ったけど逃げられたから直接来てみた。」




卵を混ぜるのに箸を持ったまま固まった私を笑ってるできれば会いたくなかった奴に逃げたくなった。




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