素直に優しく―360日の奇跡―
07話*好きは好き
「……なんで私?」
食卓テーブルの椅子に座るシン。
流しの前に立ち尽くす私。
ボソリと聞こえないんじゃないかってくらい小さい声で聞いた。
聞こえなかったら聞こえないで良いんだ。
そんな気持ちだった。
「なんだろな。ヨリだから?」
「…なに、それ…」
「ヨリって思った事言わないくせに思ってもない事言うだろ?」
いつもそうだ。
何でもないように私の隠してきた素直な気持ちを当たり前のように当ててしまうんだ、シンは。
「そのくせ言った後に後悔してんだろ?」
「なんで…わかるの?」
「わかるわかる。だって俺、ヨリが好きだから。」
シンの笑った顔にドキっとした。
ギューって胸を鷲掴みにされたみたいな痛みだけど、不思議と嫌じゃない。
「ヨリ…一人が良いって言っててもほんとは一人嫌いだろ?
ほんとは誰かと一緒に生きて行きたいって思ってんだろ?」
一人が良いと思ってた。
でも、ほんとは一人は嫌だって全身全霊で叫んでた。
それに気付いてくれたのは、声を掛けてくれたメグやシンだったのかもしれない。