素直に優しく―360日の奇跡―






"ありがとう"はまだ言えない。


"ありがとう"を言うのは私が自分で変わった時。


それまでは、やっぱり素直になれないかもしれないけど…それでも私なりに頑張るから。



台拭きを握りしめたままの滑稽な姿のまんまで小さい決意をした。





「なに、オムライス?」


「あ…うん。姉ちゃんが…」


「そう言や姉ちゃん遅いなー。

それ食っちゃうか!」




お皿に盛ってあるチキンライスを見て、今にもスプーンを取り出しそうなシンに久しぶりに笑った。

笑いながら卵を焼いた。


穏やか、ってこう言うのを言うのかなって思いながら動かす体が妙に軽かった。




「――…シン…聞いて良い?」


「なにー?」




決めたんだ。

勇気を出すんだ、自分。


一歩を踏み出せ。




「あの女は…?」




踏み出した一歩は私の勇気になる。




「従妹。さっきはばったり会っただけで…ヨリがどんな反応するか確かめたかっただけ。」


「……騙したの?」


「ごめん。」




台拭きをシンの顔に投げつけて、またわからない気持ちにイライラする。



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