素直に優しく―360日の奇跡―






「ムカつく!」


「ごめんって。」


「イライラするし…なんなの!」




わけわからない気持ちにまたイライラする。

もやもやするしイライラする。


使ったフライパンをスポンジで洗いながら納まらないイライラを隠す。




「もしかして…ヤキモチ?」


「…ヤキモチ?なにそれ。」


「そっからかよ……ヨリって世間知らずっつーかなんつーか。」




シンは苦笑いしながらなんでか私の隣に立って頭を撫でてる。

子供扱いされた気分でもイライラはしないけど…イライラの変わりに気持ちがふわふわする。




「あゆといてむかついた?」


「…うん。」


「じゃあイライラは?」


「…………した。」


「それがヤキモチ。」




ぽんぽん軽く叩かれるように撫でられる大きな掌にスッと言葉がなっとくできた。




「ヨリが彼女になってくれればこんな事もうしないけどなー。」




にこにこ笑うシン。

――…策士だ…!

シンを見て率直にそう思う自分がいて、でもそんなシンでも良いと思う自分もいる。



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