爽やか抹茶Days~若様のお茶はいかがですか?~
「諒ちゃんの代行が僕って決まった訳だし、そろそろ帰ろうか?あさかちゃん。」
いつものニコニコ顔のまま、間宮君が何か言いかけたのを無視して私の手首を掴んで歩き出す先輩でしたが2、3歩歩いたところでふっと間宮君の方を振り向きました。
その顔は笑っているけれど目は笑っていなくて、つい今しがたの笑顔とは違っていました。
静かに吹き付ける風が少し冷たく感じます。
「君は僕を本物の鬼を見るみたいに嫌ってるようだけど、僕は全然構わないよ。
知ってる?鬼はね、自分が大事にしてるモノはどこまでも大切にするんだ。ほら、桃太郎に出てくる鬼も宝を守ってただろ?
僕は自分のモノを取られるのは大嫌いだから、取られる位なら鬼と呼ばれても全然悔しくないよ。君には僕の言ってる事は分かるよね?」
私にはよく分からないのですが、間宮君は理解したみたいで悔しそうに先輩を睨みつけています。
そんな間宮君の表情を見るなり、もう誰もいない道をまた歩き始めた先輩の表情は満足気にスッキリしたようなものでした。
冷気を含んだ風は何処へ消えてしまったのでしょう。