爽やか抹茶Days~若様のお茶はいかがですか?~



その時スッと襖の開く音の先に目を向けると八束先輩の姿がありました。

そして私のいる位置からは見えない入口の方へ顔を向けて「先生、どうぞ」と先生らしき人に入室を促しています。


八束先輩に促されて入って来た方は丁度春の頃に似合う淡い桃色が地の着物を着て、髪を綺麗に結い上げた女性。

ツ…ツ…と畳っ足袋が擦れる音と共に襖から入って真っ直ぐ茶室の一番前の中央へ。
歩き方一つでも洗練されていて思わず目が奪われてしまいます。


みんなと向き合う様にして座るのを確認すると八束先輩も遅れて列の空いている所に座りました。


そして
「ご指導よろしくお願いします。」

八束先輩の凛とした声が静まり返った茶室に響いたと同時に皆一同にひざ元に手を揃えて礼を。


さぁお稽古の始まりです。




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