ティーン・ザ・ロック
「さてと。俺はまだ電話しなくちゃなんねぇからさ。
お前は寝たら?」
立ちあがりながら大きく伸びをする兄。
「ううん、何だか眠くないから…。
冷蔵庫の整理でもするよ。喪中になったらお肉、食べられないでしょ?」
「まぁ、言ったら今も喪中だろうけど…。さっき鶏肉食っちまったしな。
でも、やってくれたら有り難いよ。
親の場合は一週間…だよな?肉も魚も腐らせちまったら勿体ねぇから」
兄は 宜しく、と言って 父が残した手帳を開いた。
書かれている番号に順番に電話をかけ
「夜分に申し訳ありません。逢坂 要と申します。
ええ、父の長男です」
と、前置きをして、丁寧に対応する姿を暫し見つめてから
地味な作業に取り掛かった。
……鳴り響いた呼び出し鈴の音で目を開け、勢いよく身を起こした。
カーテンから差し込む太陽の日差しが視界に入って、寝てしまっていた事に今更気付いた。
いきなり動き出したあたしにびっくりした声を上げた兄だったが、『おはよう』と言って、乱れたあたしの髪を整えてくれる。
「…わ…ゴメン、あたし…寝てたんだ」
「いーよ、無理しなくて。誰か来たみたいだから、ちょっと見てくる」
とたとた と 廊下を速足で進む兄を見送ってから時計を見る。
壁にかけられた可愛らしい時計の針は、六時を大きく廻っていた。