ティーン・ザ・ロック
心を奪われた様に、ただその横顔に視線を向けていると、彼がこちらに気付き、眉をしかめてくる。
慌てて顔を反らしたが、身体に突き刺さるような視線が、彼があたしの行動を不審がっていると物語っていた。
…何をやっているんだろう。
自分の、あまりにも大胆な行動を思い出し、一人赤面する。
これじゃあまるで、恋してるみたいじゃない。
「…それでは、各クラスの班割りなど、偏りのない様に決めて下さい。
今日はこれで終わりますが、また何か出てきたら集まって貰う事になりますのでよろしくお願いします」
呆けている間に話し合いは終わってしまったようだ。
――しまった。全然聞いてなかった。
席を立ちあがり、我先に と出ていく生徒達。
杉澤君は人が居なくなってから出るつもりらしく、席に座ったまま、渡されたしおりを眺めていた。
……どうしよう。
何をどうするのか、全然、全く頭に入っていない。
「…あの、杉澤君。ちょっと、良いかな」
チラリと視線だけを向けて来た彼に、恥を忍んで尋ねてみる事にした。
これで教えてもらえなくて困る事になっても、それは自分自身が招いた事だ。
「さっきの話し合いで出された指示、全然覚えれてなくて。
良かったら、で良いんだけど…。何をどうすればいいのかを教えてもらえたら嬉しいなー…なんて」
上目づかいで彼の表情を盗み見ると、案の定、くっきりと眉間にしわを作っている。
断られる。
そう思ったのだが……
思ったより彼は、面倒見が良いらしい。
迷惑そうにしながらも
「……忘れないようにメモして」
と、教えてくれる事を前提とした口調で、ペンを握るよう促してくる。
慌ててシャーペンを手に取ると、淡々とした口調だったが 書き取れる様にゆっくりと話してくれた。