ティーン・ザ・ロック
全ての説明が終わると、静かに席を立つ杉澤君。
「…じゃあ、行くから」
「え…!あ…あたしも一緒に行く!」
「……良いけど」
無表情のまま、あたしが立ち上がるのを待ってくれて、それから一緒に視聴覚室を出た。
彼は相変わらずの無言だったが、あたしの方は、今度はちゃんと彼の隣を歩く事が出来て嬉しくて堪らなかった。
彼が、隣に居る。
ただそれだけなのに 何だか心の距離まで縮まったように思えたのだ。
でも、もっともっと彼の事が知りたい。誰も知らない、彼の心の中を。
深い部分の、暗い所まで。もっと、もっと。
独占欲にも似たその感情は、図々しさと言うスキルをあたしに植付けた。
「…杉澤君は、兄弟とか居るの?」
普段なら、自分から男の子にこんな話題を振る度胸など皆無だったはずなのに
今は彼への興味の方が勝っている。
自分のあからさまな態度の変わり様に多少戸惑いながらも、彼の返答を待ってみた。
暫しの沈黙の後、彼がポツリと呟いた言葉に答えはなかった。
「……そんな事聞いてどうするの」
しまった、と思った。
個人的な質問をするには、まだ早かったのだ。
…でも、もう聞いてしまったのだから。何としてでも、この答えだけは聞きだしたいと思った。