ティーン・ザ・ロック
「……さっき、話し合いの内容を教えてもらった時に、面倒見がいいなって思ったから…。
でも、言いたくないなら 無理にとは言わない」
……我ながら、嘘が上手くなったと思う。
面倒見がいいと思ったのは本当だが、言いたくないなら言わなくて良いと言うのは嘘だった。
でも、優しい彼の事だ。
きっと、そう言われてしまったら 本当に失礼な内容でない限り、答えてくれるに違いない。
予想通り、渋々と だったが、質問に答えてくれる気になった様だった。
「……弟が、一人。まだ幼稚園の年中」
「そうなんだ。だから面倒見が良いんだね」
「……分からないけど」
「…でも、随分歳が離れてるんだね」
「…………」
これには答えてくれる気は無いらしい。
まだまだ距離は縮まっていないと言う証拠だ。
その後はもう何も聞く事は無かった。
兄弟の話題でも答えを渋るのだ。これ以上突っ込んで聞いたとしても、まともな返答が返ってくる筈は無い。
諦めて、ただただ足を動かし、無言のまま教室の前にたどり着いた。
扉は締まっていたが、中からは紅葉達の話声が聞こえてくる。
中に入ろうとした時、杉澤君がそれを制した。
「……何?」
「……今は入らない方が良いかもしれない」
…?
何を言っているんだろう。
中には紅葉や冬華たちが、あたしを待ってくれているのだ。どんなに遅くなっても構わないと言われているからと言って、あまり長い間待たせるのは得策ではない。
だが、彼のあまりの真剣な眼差しに、一瞬躊躇する。
そして。
彼があたしを教室に入れたくなかった訳を知るのだった。