ティーン・ザ・ロック
ぱたぱた と、滴が頬を伝ってブレザーに染みを作った。
泣くつもりなんか無かったのに。感情がどんどん涙となって溢れてくる。
「……逢坂…さん」
躊躇いがちに名を呼ぶ彼に、視線を向ける事無く
「……ゴメン、一人にして」
そう言って腕を振りほどき、駆けだした。
何処に行けば一人になれるのだろうか。それだけを考えて。
ひたすら走って、たどり着いたのは屋上だった。
本来なら立ち入る事の出来ない様に鍵がかかっている筈なのだが、ドアノブを回すと簡単に鉄の扉が開く。
何でだろう、なんて考える余裕も無く、冷たいコンクリートにへたり込んで
泣いた。
声を上げるわけでもなく
ただ、地面や制服に涙を垂れ流す。
時折、びゅう と吹く五月の肌寒い風が
溢れた涙を浚って行った。
虚しいなあ
そう思った。