ティーン・ザ・ロック
「側に…居てよ…」
「…………」
自分でも面倒くさい女に成り下がっていることぐらい百も承知だ。
杉澤君にとってあたしは、ただのクラスメイトでしかない事も。
幾ら泣いているからと言って、こんな事を言われて迷惑に思わない人なんか居ないだろう。
それでも…。
あたしは彼に側に居て欲しいんだ。
-----ひと際強い風があたし達の間を駆け抜けた。
びゅう と身体に当たる風が音を奪っていく。
はためく髪の隙間から、微かに見える杉澤君の表情は
何故かとても嬉しそうに見えた。
風が止んで、また音を取り戻した時
「………いいよ」
確かに彼は そう言った。
立っていた場所に座り、こちらをチラリと見てきた杉澤君。
……やっぱり、雰囲気が違う。
いつもよりも柔らかい顔をしている。
目が合うと、珍しく彼の方から話題を振って来た。
「……ホントは、ここ、僕の秘密基地だったんだ」
「秘密基地…?」
「そう」
何でもない会話でも、彼の方から話しかけられたと思うだけで
心臓がどうにかなりそうな程嬉しかった。
自分の一大事だと言うのに、何故だろう…。
彼と一緒に居るだけで、虚しかった心が、ちょっとずつ温かいもので満たされていくように感じた。