ティーン・ザ・ロック
「……逢坂さんが泣いてどうするの」
「…だって……」
悲しそうな顔をする癖に、涙を見せない彼を見ている事が辛かったんだ。
『自分が死んでも誰も悲しまない』
そんな事…高校生になったばかりの彼が言う言葉ではない。
あたしだってそんな事考えた事無かったんだよ…?
ねぇ……
君は、何を見ているの?
感情をまるで見せない、その真っ黒な瞳で
何を見ているの?
そこに幸せは無いの?
笑った事は?泣いた事は?
自分の思った事を素直に口に出した事は無いの……?
「………噂はさ…。気にしない方が良いよ。
僕も…ほら、色々言われてるみたいだけど。なるべく聞かない様にしてる。
…聞きたくなかったら、またここに来れば良い」
「………うん…」
聞けなかった。
“何があったの?”
なんて。
聞いたって何も言えない。
今のあたしじゃ、陳腐な事しか言えない。
……そんなものじゃ、彼は救われないのだから。