ティーン・ザ・ロック



「……ごめんね……」



涙を手の甲で拭いながら謝ると『…何が?』と、ちょっとだけ笑ってた。


口角を僅かに上げるだけの、ぎこちない笑みだった。



「……帰ろうか…。途中までで良かったら送るよ」



「…うん…。ありがとう…」




先に杉澤君が立ちあがって、あたしの腕を取って立ちあがらせてくれる。


その時に、見てしまったんだ。



ブレザーの袖口から覗く、左手首の痛々しい青痣を。



「……杉澤く…」



目線がそこに行っていると感じたのだろう。

パッと手を離して、右手でその部位を隠し、

言い終わる前に、あたしが聞きたかった事を先回りする。



「………ああ、コレ…。

…何でもないよ」


「…何でもないわけないでしょ…。


見せて」



彼は渋ったが、無理やり腕を取り、ブレザーをたくしあげた。


「………コレ、林田…でしょ」


「………」


何も答えてくれなかったが、黙っていると言う事は肯定と取って良いと言う事だろう。


こんな痣…どうやったら付けれるの…?見るからに腫れあがっていて、曲げる事だって相当な苦痛を強いる筈。


もしかしたら、骨にひびが入ってるかもしれないのに。


彼はこんな傷を抱えながら、平気な顔で手当てもせずにいるの…?


「……ちょっと、一緒に来て」


「え……」


困惑する彼の腕を、からめ取る様にして歩き出す。


少し暴れていたけど…そんな事、どうでも良い。絶対にこのまま帰すなんて出来ないから。




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