ティーン・ザ・ロック
「……ごちそうさまでした」
食べ終わった後も、彼は礼儀正しく手を合わせていた。
「デザートあるよ。マンゴー。旬なんだって」
先に食べ終わったあたしは、もう既にマンゴーも口に運んでいる。
「ちょっと良い所のマンゴーだから、甘くて美味しいよ~」
雪さんも彼の隣で、丸ごと一個を半分に切ってスプーンで贅沢に食べていた。
「えっと…じゃあ、頂きます…」
「…ホントはお腹いっぱいなんじゃないの?」
雪さんがマンゴーを用意しに席を立った隙に聞いてみた。
彼はチラリと雪さんと、テレビに夢中になっている優さんを見てから、小さく頷いた。
「…無理する事無いと思うけど」
「……でも…マンゴー好きだから。……2つはいける」
…そう……なんだ。
マンゴー好きなんだ。
ホントにくだらないことだけど、彼の事を一つ知る事が出来た。
謎だらけの彼の、たった一つの事実。
「そっか…。マンゴー好きなんだぁ…」
それだけでこんなに嬉しくなるのは、何故なんだろう…?
分からない。分からないけど…
顔がニヤけるのを止められない位、幸せな気持ちになれたんだ。