ティーン・ザ・ロック
その後、本当に彼は美味しそうに間食し、時計の針が9時半を廻った頃、『そろそろ帰ります』と席を立った。
「じゃあ、行こうか」
「あ、あたしも行きたいですっ」
「うん、いいよー。帰りにアイス買ってこよう」
部屋着だけど…コンビニに行くくらいなら差支えは無いよね。
一旦部屋に帰り、お財布とケータイだけを手に持って、雪さんと杉澤君の後を追う。
玄関まで来ると、二人とも靴を履いてあたしを待っていた。
「ゴメン、いこっか」
雪さんがドアを少し開けると、杉澤君は玄関先まで見送りに来ていた優さんを見て、深々と頭を下げた。
「……お邪魔しました。ご飯も、本当に美味しかったです」
「あんなもので良かったらいつでも作ってあげるわよ~!
……また、近いうちにいらっしゃい。今度はもっと豪華なご飯にするから」
「…はい、是非」
彼はもう一度頭を下げると、雪さんの後に次いで外に出た。
駐車場に入って、エルグランドに乗り込む。
「今日は二人だから後ろに乗ってね」
そう言われて、たった二人では持て余してしまう広さの後部座席に、微妙な距離を保って二人で腰掛けた。
「何処まで行けばいい?」
「…じゃあ、消防署の前で」
「病院の近くにある?」
「はい」
ミラー越しに会話してから、ゆっくりと動き始める車。
カタカタと、何かが振動で音を立てる。
彼との微妙な距離に、ジワリと手のひらに汗をかくあたしを乗せて
暗闇の中を静かに走り始めた。