ティーン・ザ・ロック




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10分ほどで、彼の言っていた消防署の前に着いた。

ハザードを付け、歩道ギリギリに横付けする。



「本当にここでいいの?」


「…はい、すぐそこなんで」


「…わかった。気を付けるんだよ」


「はい。本当にありがとうございました」




雪さんにお礼を言って、今度はあたしに向き直る杉澤君。



「…逢坂さんも。…ありがとう」


「あたしは何もしてないし…。どっちかって言うとあたしの方がお礼を言うべきじゃ…」


改まってお礼を言われると、どうしていいか分からなくなる。


もじもじしていると、彼が手のひらをあたしに向かって突き出して来た。



「……これ…。必要でしょ」


その手の上には、小さな鍵が一つ、乗っていた。



「これ、もしかして…。…でも、あたしが受け取ったら杉澤君はどうするの?一個しかないんじゃない…?」


きっとそれは屋上のカギ。本来なら彼の居場所の筈なのだ。


それなのに、あたしに渡してしまうなんて、超が付く程お人よしなのかもしれない。



「……でも、逢坂さんだってそこが必要だから…」


「…だったら、メアド交換しようよ。


そしたらお互い、使いたい時に鍵を渡す事だって出来るでしょ」



「それは…いいね」



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