ティーン・ザ・ロック
思いがけない事で彼の連絡先を知る事になった。
彼は赤外線でアドレス交換をした事が無いらしく、おたおたとしていたけど。
「じゃあ、鍵が必要になったら連絡するから」
ありがとうございました
再度そう言って、薄暗い道の中を歩いて行ってしまった。
車内からその姿を見送って、見えなくなった頃に前に向き直ると
「…若いっていいねぇ~」
雪さんがにやにやとあたしを見ていた。
「……別に」
何だか居心地が悪くてそっぽを向く。
「良い子じゃないか。無口だけど無愛想なわけじゃないし、礼儀だって良い」
「……そうですね…」
確かにそうかもしれない。
話しかければ、大抵の事なら答えてくれるし、真剣に話を聞いてくれる。
それは無愛想なんじゃなくて、ただ人と触れあう事に慣れていないだけなのではと思った。
窓の外の暗闇から、フロントガラスに視線を移すと 先程とは全く別の、
真剣な表情であたしを見ている雪さんに気付く。