ティーン・ザ・ロック
未だ流れ続ける涙を拭いながら、来た道をゆっくりと戻る。
隣で心配そうにしている兄に笑いかけながら、兄は強い人だな、と思った。
ショックを受けている筈なのにうろたえる事無く
こうして人に気遣う事の出来る強さ。
それは誰にでも出来る事ではないだろう。
「…葉瑠は部屋の外で待っててもいいんだぞ?
もう、葬儀屋も来てるし…。後は俺たちに任せて、優さんと一緒に先に家に戻った方が良い」
ポンポン、と頭を撫でられ
自分はなんて情けないんだ、と少し申し訳ない気持ちになる。
「…でも…」
「大丈夫だよ。手続きが終わったら、直ぐ帰るから。
それに…。葉瑠は優さんと一緒に、葬儀の招待客リスト作って貰えると助かるんだけどな」
「…うん、それなら あたしにも出来るね」
「…頼んだぞ」
一つ、大きく頷いたあたしの頭を、もう一度優しく撫でた兄は
優さんにあたしを任せてから、叔父さんと一緒に葬儀屋さんの所に行ってしまった。
「…葉瑠ちゃん…。…帰ろっか」
「はい…」
兄と入れ替わる様にして現れた優さんに支えられながら、タクシーに乗り込んだ。
それは
どんよりとした雲が、今にも泣き出しそうな そんな日だった。