ティーン・ザ・ロック
揺らめく、心
葬式の日は、病院から帰ったその時の様に
厚い雲が空を覆う、とても暗い日に行われた。
喪主は叔父さんが勤めてくれる事になり、あたしは、弔いに来てくれた人の受付を任された。
記帳して貰いながら、叔父と一緒に挨拶をしている兄を見る。
通っている高校の制服をきちんと着こなしたその姿を見るのは
きっと入学式依頼だろう。
いつもより何倍も真面目そうにしている兄の姿を両親が見たら
『嵐でも来るんじゃないか』なんて言いだしそうで
想像したら少しだけ頬が緩んだ。
「葉瑠ちゃん」
「あ、優さん…」
長い髪を綺麗にまとめ、黒いレースの付いた飾りを付けた優さんに声をかけられる。
「もう、葬儀が始まるから。ここ、代わるわ」
「あ、じゃあ…お願いします」
ニコリと微笑む彼女にお礼を言ってから
参列する弔い客を掻き分け、やっとの事で兄と叔父の横に来る事が出来た。
「葉瑠。大丈夫か?」
兄はまたあたしを心配してくれる。
「大丈夫。…ちゃんと見送ってあげないとね」
二つ並んだ、桐の棺を見つめ、もう今日でお別れなんだ と気を引き締める。