ティーン・ザ・ロック
遠ざかっていく足音。
やがてそれが消えると、先生が溜め息をついて、自販機の前にある椅子にどっかりと腰を下ろした。
「…座りなさい」
「………」
無言のまま、テーブルを挟んで向かい側に座る。
「……何か飲むかー…」
先生はそうポツリと呟き、自販機から3本のコーヒーを買って
1本は自分に、後の2つは私達に渡してくれた。
「ありがとうございます……」
「気にしないで飲め飲め」
……怒られるんじゃないのか…?
普通、こんな時間に忍び出して異性と密会しているのがバレたら怒鳴り散らしそうなのに。
杉澤君を見ると、彼は動揺もせず、缶コーヒーに口をつけていた。
……やっぱりおかしい。
前もこんな事があった…。
遅刻してきた彼を注意すらしなかった事が。
何かあるのだろうか。
でも、自分から聞けるわけがない。
「煙草、吸って良いか」
先生がポケットから煙草を取り出し立ち上がった。
そして返事を待たずに火を付ける。
もあっとした煙が鼻に入ってくる。
「……もう少ししたら部屋に戻って良いからな」
先生は、頭を掻きながらそう言った。