ティーン・ザ・ロック
「………でも、噂は広まってる。
先生も、僕の母と理事長の関係を知っているから。
だからあまり強く出られないんじゃないんですか…?
僕を叱責して、それが理事長に伝わる事を恐れている。
…そうでしょう?」
彼の先生を見る瞳は、深くて真っ暗で悲しい。
それでいて透き通っていて……。
現実は分かっている。でも、それを否定して欲しい様な…そんな目をしていた。
先生は短くなった煙草を灰皿でもみ消して、ぼりぼりと頭を掻いてから口を開いた。
「……そんな事情までは知らなかったが…。まあ、俗に言う大人の事情ってヤツだ。
勿論お前の母親と理事長の関係は知っている、が。
別に俺は自分の事ばっかり考えてるわけじゃないぞ?
…お前が教室内で若干浮いた存在だってことは良く分かってるつもりだ。
人間関係は誰かが間に入ったって良くなるもんだとは言えねぇだろう。
ましてや俺みたいな教師なんかが出てきたら、それこそ本当に修復不可能になることだってある。
でも、何かはしてやりたいわけよ。こんなんでも教師やってるんだから、生徒の事を考える事もたまにはある。
だから、変な所でお前を目立たせる様な真似はしないって決めた。
普段の素行が悪いわけじゃないし、成績だっていつも上位に食い込んでる。
そんな優等生君の、多少のやんちゃや遅刻位、目ぇ瞑ってやっても良いんじゃねぇか?」