ティーン・ザ・ロック




一度、長いクラクションが鳴り響き



涙を流す会葬者の間を、ゆっくりと進んだ。



初めて乗る霊柩車。



静かに、ただひた走るその車は、意外にも乗り心地が良かった。




火葬場に付き、後から付いてきた親族と共に準備を済ませると


先程まで会場に居た会葬者も、マイクロバスで到着し



最後の別れへと移った。



葬儀の間中、一度も開かれなかった棺。



聞けば、焼死体となった死体は、よほどの事が無い限り開かれないのだという。


だが、もう顔を見れるはコレで最後だ。



見ないで後悔するより、どんなに酷い死に顔でも最後に一目会いたいという人たちの為に


少しの間だけ棺が開けられた。



葬儀以上に泣き崩れる人たちを見つめながら、隣に立つ兄にお願いをする。



「お兄ちゃん」



「…ん?」



「あたしも、花をあげたい」



「葉瑠…でも、お前…」



兄が心配するのも無理は無い。だけど…



「大丈夫。この前ほど取り乱す事は無いと思うから。


でも、隣にいてくれたら…もっと安心なんだけどな…」


「……ああ、勿論。

ずっと、お前の近くに居てやるから」


柔らかく微笑んだ兄に、少しだけお父さんの顔が重なった。



< 18 / 337 >

この作品をシェア

pagetop