ティーン・ザ・ロック




あたしは彼女のこういう所が苦手だった。


頭いいね って言えば全然だよと言う。綺麗だね って言っても不細工だと言う。



そう言えば『そんな事は無い』と言われるのが分かっているから。



言われると気分が良い事を分かっているから、彼女はそうやって繰り返し自分を否定するんだ。



あたしにしてみれば『そう?ありがとう』と

その一言だけ言う人の方が高感度が高いと思うけど。



多分男は違う。謙遜する良い子だなー…なんて思うに決まってるんだ。



だからこんなにも兄は骨抜きにされてるんだ…。





「ただいまー」



兄と留美がソファーでいちゃいちゃし始めた頃、雪さんと優さんが帰って来た。


「…お兄ちゃん、帰って来たよ」


だからもう離れてよ。



語尾にそんな言葉を隠して。



兄は気付く筈も無いのだけれど。






「要くん来てるー?」


「あ、はーい!お邪魔してます!!」


廊下から優さんが叫んで、兄がそれに答える。



「要、一か月ぶり」


「雪さーん!!益々カッコ良くなって…」


「それはこっちの台詞」



雪さんにじゃれる兄。留美は借りて来た猫の様に大人しくなっていた。





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