ティーン・ザ・ロック
ゆっくりと棺に向かうと、それに気付いた人たちが道を開けてくれた。
「葉瑠ちゃん、コレ」
その場にいた叔父さんが、2本の白菊をあたしに手渡す。
「ありがとう…」
ニコリと笑顔を作って
開けられた観音扉を覗き込んだ。
そこには。
「お父さん…」
真っ白な花に囲まれ横たわる、父の姿が見えた。
表情は読みとれない程変形しているが、きっと、安らかな笑顔だと思う。
お父さん。
いつも笑顔で、怒ってる時なんて無かったよね。
ずっとずっと笑ってて
あたし達に不安を与えなかった。
どんな問題があっても
『大丈夫だ!お父さんに任せなさい』
って、大口開けて笑ってた。
たったそれだけの言葉なのに、何でかな。
それがお父さんの言葉だって思うだけで、皆も笑顔になったんだよ。
大好き、大好きだよ…。
絶対に忘れないから。
「ありがとう、お父さん」
クン と花の匂いを嗅いで
ゆっくりとその頬の横に添えた。