ティーン・ザ・ロック




杉澤君が車に乗り込んで、取り合えず東京タワーを目指す事になった。


雪さんも車で東京タワーに行くのは初めての様で、カーナビに向かって目をしかめながら場所を確認している。



それを見てみんなが 不安だ、と笑う。



でも…あたしは笑えないよ。



もうさ、泣きそうなんだよ。




冗談でもあんな話聞きたくなかったのに。たったひとりの家族だよ…?


大好きな両親を失って



その上兄とあたしは血が繋がっていない…?




そんなバカみたいな話…



信じたくないけど、疑ってしまってる自分が嫌だ。




まさか、と笑い飛ばしてしまえば良いのだけど



そんな事が出来る位の余裕があたしには無い。






「…逢坂さん…?」


杉澤君があたしの顔を覗き込んで来た。眉根を寄せて、心配そうに。



「……ん?」


「……元気、無いね」



話してしまいたい。でも…今すぐという訳にはいかない。


兄たちがここにいる内は。どちらが養子なのかを知らない内は。




「ちょっと車に酔っちゃったみたい…。


雪さんの運転、今日は荒いんだもん」



そう誤魔化して、皆の笑いを引き出して見せる。



「仕方ないでしょー!知らない道だと方向音痴の俺が、まともに運転出来る余裕なんてあると思う!?」


「こえー!」



大きな笑い声の中で



今日のあたしは一人ぼっちだった。





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