ティーン・ザ・ロック
「…逢坂さん…?大丈夫?」
「え…」
彼の手があたしの頬を撫でる。
手の感触の他に、何か、ぬるりとした液体が塗られたような気がして
慌てて自分も顔に手を当てる。
「あ」
…違う。あたし…泣いてるんだ。
指先に、マスカラとファンデーションの色が混じった、とても透明だとは言えない水滴が付く。
「……ゴメン。ちょっとトイレ……」
涙を隠しながら走ってトイレの個室に籠った。
鍵をかけてドアを背にしゃがみ込む。
「……何で…っ」
涙なんか…!
止まれ 止まれ
…何に対しての涙なのか。
それすらも分かっていないのに。
「止まってよ…!」
止まれと強く願う度にその勢いは増していく。
強く握りしめた手のひらに爪が食いこんで、三日月形の痣を作った。