ティーン・ザ・ロック
「お母さん」
父の横に眠る母の顔を覗きこむ。
あの時はちゃんと見れなかったけど、今こうして眺めてみると
父に比べて、肌がまだ残っている部分が多い。
きっと、父が庇うようにして守ってくれたんだと思う。
そんな父の事が大好きだったお母さん。
頼りなさげな割に、きちんと考えて行動する父とは対照的に
母は全てにおいて、天然で楽観的だった。
根拠もないのに、父に便乗して『大丈夫よ~』何て言ってしまう母は
本当に父を信じていたのだと分かる。
けれど、締める時はきちんと締める母だった。
間違った事をすればきちんと叱ってくれるし
誉める時は、こっちが恥ずかしくなる位誉めちぎる。
たまにそれを人前でやるから、嫌だと思った事だってあるけれど
いつも、お母さんがお母さんで良かったって思ってたんだよ。
「お母さん…本当に大好きだよ」
遺体に向かって呟き、父にやったのと同じ様に、頬の傍に花を添えてあげた。
「ずっと、あたし達のお母さんとお父さんでいてくれて
ありがとう…」
こぼれて来た涙が頬を伝う時、兄があたしの肩を抱いてくれた。
「頑張ったな…」
「お兄ちゃ…ッ」
張っていた気が、一気に緩み
人目など気にならない程、号泣する。
声をあげ、必死に兄の胸元にしがみつき
見苦しいなんて思う暇もない位に 泣いて 泣いて。
何度も頭を往復する温かい手の温もりが、あたしの悲しみをゆっくりと溶かしてくれてる気がした。