ティーン・ザ・ロック
気付いたらもう、自分を抑えきれなくなっていた。
人にぶつかって怒鳴られようが、人目があるとか、そんな事は関係ない。
一心不乱で留美の元へ行き
驚いた顔をする目の前の女の頬を
殴った。
パンッ なんて、可愛らしい音なんかしなかった。もっと、もっと鈍い、体の芯に響くような音だった。
今だけは、我慢なんて、出来ないししたくも無い。
人々の好奇な視線が突き刺さるのも分かっていたけど
見るなら見れば良い。笑うなら笑えば良い。
誰が何を思おうと、あたしはこの女を許さない。
「…なにすんのよっ!!」
頬を抑えてあたしを睨んで来る留美。
でも、何すんの はこっちのセリフだ。
「……今、何してたの?あんたさ、よくこんな所で堂々と浮気なんかできるよね…?」
「…はぁ?勘違いしないでよ。あたしはただぁ…」
「馬鹿にすんのもいい加減にしてよ!あんたはいつもそう…!
自分が可愛くて仕方なくて、謝る事も知らない自分勝手な女だった…!!」
拳が、肩が、唇が。
わなわなと震えて思い通りになんかならない。
今のあたしがカッコ悪いのだって分かってる。
それでも、感情を言葉にしていなければ、また殴りかかってしまう程に
あたしの中は怒りでいっぱいだった。