ティーン・ザ・ロック





「…何があったんだ?」



兄はまず留美を見て、それからあたしに視線を送って来る。


「何で留美は泣いてるんだ…?お前が泣かしたのか?」



「…それは…」


なんと言って説明したらいいのか…。上手く言葉にできなくて口を噤むと



「要さァん…ッ!!」


留美が兄に泣きながら飛び付いた。



「違うの…っ!葉瑠は悪くないよ…?


あたしが勝手に泣いちゃっただけなの…。だから、葉瑠を怒らないで…?」




役者だ、と思った。



これじゃああたしだけが悪者になってしまう。きっと留美は兄がここに来ると踏んで泣いたに違いない。


それであたしを陥れる事が目的なんだ…。



「…どういう事だ、葉瑠。何で留美を泣かせたんだ?


何を言った?…頬も赤くなってる。……殴ったのか?」



「だって…」



「だってじゃないだろ!ちゃんと説明しろよ!!


……俺の彼女だぞ。何が気に入らないか知らないけどな、お前、おかしいぞ?

こんなに腫れるまで殴る位の理由があるのか?


留美が何かしたのか?なら、説明してみろよ」



おかしいのは兄の方だ。


何で妹のあたしよりも先に留美を心配するの…?泣いてるから?なら…



留美の涙が嘘だとは思わないの…?



あたしの行動がおかしい?何故おかしくなったのか、その理由を考える事は無いの?



「馬鹿、ばっかりだ」



誰にも聞こえない様に、俯きながら小さく呟く。



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