ティーン・ザ・ロック




理由を言う事は簡単だ。



けど、それをしないのは、兄が傷つく事を恐れているからだ。



こんなに留美に夢中な兄が、この女の本性を知ってしまったらきっと、絶望してしまうのではないかと思った。


親の死に加え、養子だからと援助も断り働き出した兄。



その兄を、あたしを陥れる為の偽りとは言え、ずっと側で支えて来た留美。



信じていた人が、本当は自分を愛して居なかったなんて


知ってしまったらきっと、兄はもう笑えなくなるのではないかと思った。




だから、言わない。



その方がきっと、みんな笑って居られる。




それに、人から自分が好きな人の悪口を聞いても信じられないだろう。こんなに留美を溺愛している兄なら、あたしが本当の妹だとしても、だ。






「……殴ったのは、あたしが勘違いしたからみたい。


ごめんなさい」



「勘違い?何をだ」


「………別に」



「別にって事は無いだろうが!!説明しろよ!」



留美を抱きしめて、あたしをそんな目で見て…。



もう兄はあたしの事なんか家族以下だと思っているのかな…。



以前ならきっと、あたしに向かってこんな顔で怒鳴らなかったと思う。


兄はもう…あたしの事なんかどうでも良いと思っているのだろうか…?




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