ティーン・ザ・ロック
「葉瑠ちゃーん!早くご飯食べないと遅れちゃうわよー!」
「はーい!今行きます!」
リビングから優さんの声が部屋にまで響き渡る。
急いで制服を着て、部屋を出た。
あの時…。優さんと優さんの友達が話していた時。
逃げる様に家を飛び出したが、その事には多分気付かれていないのだろう。
兄を見送って家に帰って来ても、優さんはいつも通りあたしに接してくれたし
何も聞かれる事は無かったから。
学校では本当にいつも通りだった。
いつも通り、虐められていた。
酷くなる事は無い。ただ、いつも通りなだけ。
兄もいつも通り、優さん達もいつも通り、学校でもいつも通り。
…その変化のなさが、逆に憂鬱になるのだけれど。
「今日、要くん来るんだっけ?」
優さんが目玉焼きの目玉をつぶして、そこに醤油を垂らしながら尋ねてくる。
優さんは醤油味の付いた黄身を白身に付けて食べるのが好きなんだ。
「…はい。あたしが夏休みに入るから…って、明日留美もつれてピクシーランドに…」
それもまたあたしを憂鬱にさせる原因の一つだ。
「あらぁ!いいわねっ!!東京駅から電車で一本で夢の国だもんねー!
お小遣い奮発してあげるから、お土産買って来て頂戴!」
「…ははっ…」
大人をも虜にする夢の国に行けば、こんな気分吹き飛んでしまうのだろうか…。