ティーン・ザ・ロック
「あ、そうだ。葉瑠ちゃんにお願いがあったんだった」
「何ですか?」
椅子から立ち上がって、電話の側にある引き出しから封筒を取り出し、あたしに手渡す。
「それね、前に高校から郵送されて来たんだけど、うっかり忘れてて…。夏期講習の申込用紙らしいの。
葉瑠ちゃんが希望するなら参加しても良いんだけど、それには何だか用紙に詳しい事を書き込まなくちゃいけないみたいなのね。
何でも、一週間の合宿に行くから、病歴とかそう言うのを知りたい
みたいな事は書いてたわね。
私立だからそういう所もしっかりしてるのは嬉しいんだけど、一週間って、ねぇ。叔母さん寂しくて泣いちゃうかもっ」
「あーはははは…」
しくしくと泣き真似までする、良い歳した女の人を見るのは初めてで、どう反応すればいいのか分からなかった。
取り合えず笑って誤魔化して、トーストをかじりながら夏期講習について考えてみる。
うちの学校は学力的にも素行的にも、お世辞でも良いとは言えない学校だ。
だからこその夏期講習と言えるのだろうけど、成績表を受け取っていない今の段階では、行かないとまずいのかさえ分からない。
テストの点数では大丈夫そうだったけどなー…。
「取り合えず考えてみます。提出期限っていつまでですか?」
「たしか、明々後日だったかしら…?渡すのが遅くなっちゃったから…ごめんね」
「いえ。大丈夫ですよ」
明々後日なら、兄たちと出掛けて帰って来てからでも十分間に合うけど…。
わざわざ提出する為だけに、夏休み中の学校に行くのも嫌だし
今日成績が分かるんだったら、見てすぐにでも書けるだろう。
食事を終え、時間に多少の余裕がある事を確認してから、一旦部屋に戻って封筒を開いてみた。