ティーン・ザ・ロック




中から出て来た青色の用紙を眺める。



一週間、あのコテージでの勉強合宿。あの場所ってだけで憂鬱になるのに、何?このハードスケジュール。


朝6時に起きて、夜8時まで勉強勉強……。



行きたくないけど、成績次第じゃ避けられないかも。



「取り合えず病歴だけでも」



そう思ってシャーペンを取りだしたのだけど。


「予防接種は全部受けているか?…そんなの覚えてないよ」


注射針を腕に刺された記憶はあるけど、ソレが何の注射だったのかなんて覚えているわけがない。




母の遺品の中に紛れ込んだ母子手帳を出して調べてみる事にした。


こんな事がなければ、多分じっくり見る事は無かっただろう。



母が生きていれば、きっとこんな用紙を見る事すら無かったのだから。



良い機会だから、幼少の頃の自分がどんな病気にかかっていたのかも知っておこう。



……そう思ったのが間違いだったんだ。





「えーっと、予防接種は…」


最後の方から捲っていくと、すぐに何を打ったのかが分かった。ちゃんと欄全部にハンコが押してある事が、全部摂取済みだと証明されたという事だろう。



今度は検診時の記入に目を通す事にした。



そこには母の綺麗な字で、あたしに対する気持ちが沢山沢山書き込まれていた。


”わんわんいるね、にゃんにゃんかわいいね、など、沢山お喋りしてくれるようになりました”


これは2歳の検診の時だ。



そんなことまで書いてくれていたのかと思うと、本当に嬉しくなる。



だけど…。



「あれ…?」



6~7ヶ月検診まではちゃんと書かれていたのに、3~4ヶ月検診の時は、何も書かれていない。


医師の診察を受けたという形跡すら無い。



「忘れちゃったのかな…?」


そう思ったのだけど、その前のページを開いて愕然としてしまった。



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