ティーン・ザ・ロック
震えた手で母子手帳を乱雑にクローゼットへと押し込める。足に力が入らなくて、立ち上がるのも困難だ。
それでも何とか、ベッドの縁にやっとの事でたどり着いて、へなへなと座り込む。
…見なかった事にできたらいいのに。
でも、見てしまった。それはもうどうにもならない事。
それに……シール越しに見えた、本当の父親の名前には聞き覚えがある。
「逢坂…幸一…」
『幸一』。
父の従兄である恭介さんが、酔っ払った時に言っていた名だ…。
「どうしよう…どうしよう…!!」
あたしは、あたしこそが。
兄の代わりに働くべきだったんだ…!
今まで母と父だと思っていた人達の、本当の息子である兄が何故あたしをここに預け、自らは辛い道を選んだのか。
その理由は聞かなくても分かる気がした。
兄はあの人たちの息子だから。
だからあの家を守りたかったんだ…。養子のあたしなんかには任せられない。多少の辛い事は我慢してでも、あの温もりのある家を守りたかったんだ。
あたしの帰る場所を守るなんて、真っ赤な嘘だ。
元々その家には、あたしなんかの居場所は無かったんだから。
そうだよ。
きっと、そう。