ティーン・ザ・ロック
それに、ここにだって居ちゃいけない。
今までは父のお兄さんだから、こうやってご厚意に甘えて来られたけど今は…。父親が違う事が分かってしまって、それでも尚甘えて居られるほど、あたしは図々しい人間じゃない。
「葉瑠ちゃーん!?もう走らないと遅刻しちゃうわよー!」
優さんの心配そうな声に、前以上に申し訳なく思ってしまう。心配かけてすみません。義理の弟の娘でも無いのに、本当にすみません。
鞄を持って階段を駆け下りると、下で優さんがバックを持って立っていた。
「会社に行くついでに送ってってあげる!夏休み直前のこの日に遅刻なんていやでしょ?」
「え、でも…」
高校とは真逆の方向なんじゃ、と言いかけたが、『良いから良いから』と腕を取られてしまったので、その言葉は引っこめることにした。
本当なら、まだ家でゆっくりして居られるのに…本当に
「すみません…」
あたしなんかの為にこんな事しなくても良いんですよ…。
自嘲気味に心の中で呟いて。
優さんはカラカラと笑いながら
「何ー?そんなに暗くならないでよー!
早く出勤すれば早く帰って来られるんだから、葉瑠ちゃんは気にしないの!」
ね?
と、微笑んでくれた。
嬉しかったけど
今のあたしには優しくしないでほしい。
小さく開けた窓から
ぴゅううっ と車内に飛び込んできた風が明るい音をたてて
夏の匂いを運んで来た。