ティーン・ザ・ロック
黒幕
「おはよー」
「おはよっ!今日、オケってこうよー!」
教室に着くと、皆そんな会話をしていた。
浮かれて、はしゃいで、悩みなんかこれっぽっちも無い様な、そんな顔と声で。
今日も、誰もあたしに挨拶なんかしてこない。
でも今日はそれがとても嬉しかった。
こんな気分で何を話せばいいのか、そんな事を考えなくて済んだのだから。
鞄を置いて時計を見ると、HRまで後15分も時間がある事に気付く。
車で送って貰った分、いつもよりも早い時間に教室に着いたようだ。
スカートのポケットを探ると、ひんやりと冷たい金属が指先に当たる。
屋上の鍵…。
ケータイと財布だけを持って、ふらふらと、何かに引き寄せられるように教室を出る。
とてもじゃないけど、こんな気分ではあの騒がしい中に一人居られないと思った。
人目を気にしながら屋上への階段を上る。
その時、廊下や教室から聞こえてくる話声の他に
もっともっと近い場所で、誰かが話しているのが聞こえて来た。
ふと上を見上げると、踊り場の隅の方に一組のカップルらしき人たちが居るのが見える。