ティーン・ザ・ロック
紅葉の悲痛な叫びに、林田は躊躇いながら『なあ』と切り出した。
「その…さ。別に疑ってるわけじゃねぇんだけど…。
杉澤に襲われそうになったって、ホントなのか?」
襲われそうになったって…紅葉が…?杉澤君に…?
そんな事、ある筈がない…!!
彼がそんな事、する筈がないんだよ…っ!!
泣きそうになりながら唇を噛み締めて。それでも黙って二人の話を聞く。
「…何?紅葉の事疑ってんの…?
ホントだって言ったよね…?
紅葉が一人で教室に残ってた時、杉澤が突然紅葉の事押し倒して来たって…」
本当は飛び出して行きたかった。
彼が誰かを性的暴行をしようとしたなんて絶対にあり得ない。
彼がどんな理由で産まれて来たか、それを知らないからこそ言える嘘だ。
だけど…それを知らない林田は信じてしまうんだ。
「……財布だって盗まれたしな。さっきの話聞いて殴りに行ったその腹いせだろうけど。
………分かった、でも、今日で最後にする。いいな?
そろそろ危ないと思うんだ。俺がアイツを暴行してるのがチクられでもしたら…」
「……良いけど、でも…。
今まで以上に殴ってくれたら、ね。それから、くれぐれも杉澤の顔には傷を付けないで」
「分かってるよ」
そこまで聞いて、その場を離れた。
彼に、教える為に。