ティーン・ザ・ロック
出来るだけ急いで。でも走らずに。
自然に見えるよう、目立たずに。
息が切れるのはきっと、急いで疲れたからだけじゃない。
今まで彼を苦しめていた黒幕が分かってしまったからだ。でも…何故?
何故紅葉があんな嘘まで付いて林田をたきつけたりなんかするんだろう。
分からないけど…でも…。とにかく彼に話さなければ。
犬の様に息をしながら教室にたどり着く。
彼は……いた。
「…杉澤君」
「…おはよう、逢坂さん。…どうしたの……?」
突然現れたあたしに多少驚きながらも、少しだけ微笑んで挨拶してくれる。
彼は以前と比べて雰囲気が柔らかくなったと思う。
その変化がとても嬉しくて…とても愛おしくて。
何があっても、彼だけは守りたいと思った。
「あのね、あたし…さっき聞いちゃったんだけど…」
そう切り出し始めたのだけど。
「席に着けー!HR始めるぞ!」
「わーっ!セーフ?セーフだよね、センセ!」
担任とほぼ同じタイミングで紅葉までもが教室に現れてしまった。
「……後で話すよ」
「…?……うん」
担任だけならまだしも、紅葉が来てしまっては。
諦めて自分の席に着く。