ティーン・ザ・ロック
紅葉も、クラスメイトと挨拶を交わしながら自分の席に座った。
彼女とは色々あったけれど、何故か席だけは移動する事がなかった。あたしなんか嫌いだろうに、意地でもその席をキープしたいらしい。
自分の事を襲ったって言ってる杉澤君が通路を挟んで隣だというのに、だ。
やっぱり何かがおかしい。紅葉は何を考えているんだろう。
イカレてる、と思った彼女の行動に、一貫の目的と言うか、信念の様なものも感じられる気がするけど
それが何なのか、なんて…あたしには分かる筈もない。
「えー…。明日から夏休みだがー。遊びは常識のある程度に、程々にしてくれよ。夏休みに先生お前らの面倒見たくはねぇからなー。くれぐれも問題は起こさないでくれ!いいな!以上!廊下並べー」
いつもの様にやる気のない担任に、生徒からは失笑が起きる。
ダラダラと廊下に移動する生徒達の、一番後ろに付いてあたしも移動をした。
……話すタイミングが見つからない。
どうしよう、早く教えないと彼が…。
焦る気持ちとは裏腹に、列は移動を開始する。出席番号順に並んだ列では、あたしと彼の位置はあまりにも遠すぎた。
ちらりと後ろを振り返って彼の姿を探す。が。
居ない…!?
すると、教室の前で見覚えのある男たちに連れられて、体育館とは真逆の方に移動し始める彼の姿を見つけた。
林田…!
慌ててあたしも列から離れ、彼の元に駆け寄る。
待って、待ってよ…!!
だけど……。
「葉ー瑠ーちゃん。
…何処に行くの?終業式サボるなんて、いけないんだー」
ガシッと掴まれた腕。
振り返ると、やっぱりそこには紅葉が立っていた。