ティーン・ザ・ロック
「…あんただよ」
「は?」
「あんたから聞いたの」
何を言っているのかよく分からない、と言った顔であたしをじっと見つめてくる。
あたしは少し間をおいてから、ゆっくりと、問いただす様に言葉を紡いだ。
「今朝、林田と話してたでしょう…?あんたが今まで何をして来たのか、これからあたしに何をするか。全部、聞いちゃったんだよ、紅葉。
……ねえ、何で?何で杉澤君なの…?
襲われそうになったって、嘘だよね?」
「……本当だもん。紅葉は、アイツに襲われそうになって…」
「嘘。絶対に彼はそんなことしない」
「ホントだっつってんでしょ!?
男なんてねぇ!豹変するもんなんだよ!!杉澤だって、あんなに大人しそうな顔してるくせに…紅葉の事…っ」
泣きそうな顔で叫んでいるけど
それはきっと、その時の事を思い出してではなく、あたしが彼女の言う事を否定しているからだ。
思い通りにならず、彼女はいらいらしてるんだ。
「……彼は、女の人を襲う事なんて出来ない。
そんな事…彼が産まれた理由を知らないから言えるんだ」
「……産まれた理由…?」
あたしが彼のヒミツを話してしまって良いのか。悩んだけれど…言わない限り、紅葉は自分の非を認める事なんてないだろう。
ゴメン、杉澤君。
心の中で謝って、口を開いた。
「彼は、強姦されてできた子どもだったんだよ」
紅葉の顔の変化が、彼女の心が絶望に飲みこまれていくのを示していた。
「……自分の母親が経験した苦痛を、人に味わわせる事が出来る位、彼は狂ってないでしょ。…その位、紅葉だって分かるよね…」
諭すようにそう言うと、へなへなと地べたにへたり込んでしまった。