ティーン・ザ・ロック





「でも…紅葉は…。……そんな…。なんで…」



地面を虚ろに見つめたまま、ぶつぶつと取り憑かれた様に何かを呟く紅葉。


何だか見て居られなかったけど、肝心な事を聞かないままでは、彼の元に行く事が出来ない。





「何で、杉澤君にばっかりこんな事するの。

何で彼が嫌いなの」



もしかしたら彼にだって非があるかもしれない。彼女が彼を苦しめても許される理由が、もしかしたらあるのかもしれない。そう…思ったんだけど、な。



「……嫌いなんて、誰が言ったの」



「…え……?」



彼女の開き直る様な、投げやりな言葉に驚愕してしまったんだ。




「私は、あの人が好きなの!!誰にも取られたくない!!分かる!?この気持ち…。


いつも一緒に居るあんたには分からないだろうけどね…!」



「好きって…本気で言ってんの?」



「……悪いの?私なんかが彼を好きになっちゃ悪いって言うの…?


私は誰よりも可愛自信があるし…っ!彼もホントは凄くカッコいいんだって事、私だけは知ってるもん。だから私達はお似合いの筈だったのに…ッ!!


アイツが私を振るからいけないのよ…ッ!!だから私…っ。


…何で?ねぇ、何でよ!!


私はダメで、アンタが彼の側に居られる理由って何なのよっ!!」




泣きながら、縋りつく様に責めてくる彼女が、何だか可哀想になってしまった。


きっと彼女も辛かったんだろう。失恋の経験は無いけど、片思いの気持ちならあたしにだって分かる。


彼の側に他の誰かが近づくなんて、考えただけで心臓が潰れてしまいそうな程苦しいと思う。


でも、やっぱり…。



「紅葉は間違ってるよ」



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